クロンプットを演奏中のソダン族の女性

（楽器の音）

ソダン族が使う代表的な楽器には、トルンやクロンプット、太鼓、ホーン、ゴングなどがあります。なかでも竹製の簡素な打楽器トルンとクロンプットが最も一般的です。コントゥム省文化スポーツ観光局のファン・ヴァン・ホアン副局長は次のように語っています。

（テープ）

「ソダン族は日々の生活の中で、手近な竹を材料に自らこれらの楽器を作ってきました。クロンプットは主に女性が使い、2、3人で演奏します。一方でゴングは男性が演奏します。トルン、クロンプット、ゴングなどを組み合わせて演奏するのが一般的です」

トルンは、長さの異なる竹の棒を縄はしごのように糸でつないだ、木琴に似た打楽器です。竹製のバチでたたき演奏します。トルンのリードパイプはギターの弦のように重要な部分で、音を出す役割があります。各パイプは風管とリード管の2部分から構成されており、この2つの組み合わせによって正確な音程と響きが生み出されます。竹のパイプは細い丈夫な紐で連結されています。職人たちはパイプの口の部分を少しずつ丁寧に削り、その後音を確かめながら微調整を行うことで、望む音色を出すことができます。

一方、クロンプットは7～10本の竹管を並べた独特の楽器です。これに手のひらで空気を送り込むと、暖かみのある共鳴音が奏でられます。ソダン族の女性たちが見事な手さばきで音を出し、その美しい響きが山々に広がります。この楽器と稲作には深い関係があると考えられています。種籾の入れ物に稲の霊が宿ると信じられ、クロンプットの演奏は豊作を呼び、害獣も追い払うと言われています。また、恋人同士の気持ちを表す手段でもあります。地元の著名な芸術家、イ・シン氏はは次のように語っています。

（テープ）

「クロンプットを上手に演奏するには情熱が必要です。かつては数日にわたり演奏し続けることもありました。豊作の年などは、皆で村の集会場で祝い、クロンプットの演奏に合わせてゴングを打つこともありました。日本や韓国、中国などからの観光客の方々もよく足を運んでくださいました」

ソダン族には他にも、川の流れを利用した"水の琴"という珍しい楽器があります。川岸に立てかけた太さの異なる竹パイプに水が流れ込み、それぞれ異なる音が出る仕組みです。先ほどのイ・シン氏は次のように話しました。

（テープ）

「『水の琴』は非常に珍しく、製作が難しいです。年配の人しか作り方を知りません。大小の竹パイプに水が流れ込むと不思議な音色が出るのです。川辺を歩いていると耳に心地よい音が聞こえ、忘れられない思い出となります」

村の祭りやイベントでは、儀式の後に演芸会が開かれ、歌や踊り、民族楽器の演奏が披露されます。コントゥム省では伝統文化の保護と継承に力を入れています。コントゥム省文化スポーツ観光局のファン・ヴァン・ホアン副局長は次のように述べています。

（テープ）

「コントゥム省は毎年、11月23日の『ベトナム文化遺産の日』や文化スポーツ観光省の行事には芸能団を派遣し、各少数民族の文化的アイデンティティーを表現する機会を設けています。文化交流を通じて、伝統文化の価値を若い世代に伝え継ぐ役割を担っています」

現在、コントゥム省の村々には多くの文化芸能グループができており、住民に芸能を披露しながら、若い世代に楽器の作り方や演奏法を伝承しています。これがソダン族の文化的アイデンティティーを守る助けとなっています。