トン・スアン教授(左) |
ボー・トン・スアン教授は、ベトナムの最大穀倉地帯である南部メコンデルタ地域で栽培される多くのおコメの人気品種の「父」として知られており、ベトナムの著名な農学者の一人となっています。生前、彼は、南部メコンデルタ地域の農業開発のために、時間と情熱を注ぎ、多大な成果を上げました。去る8月19日に、ボー・トン・スアン教授は享年84歳にて逝去されました。
ボー・トン・スアン教授は、農業への科学技術導入に先駆けた人物であり、価値のある複数の研究、構想を展開していました。彼は、栽培新品種の発明、耕作工程の革新、農業資源管理能力の向上に手を付けたことで、農業の生産性の向上、農民の生活改善に貢献しました。さらに、彼は、南部メコンデルタ稲研究所の設立と発展に功労があった人でもあります。
カントー市農業農村開発局のチャン・タイ・ギエム副局長は次のように明らかにしました。
(テープ)
「トン・スアン教授は、他の農学者とともに、南部メコンデルタにおける稲作の開発、食料安全保障の確保に大きく貢献しました。教授が国際稲研究所で活躍している間に、新しい稲品種の発明に参加しました。その活動は、同教授の以後の活躍の土台であるとされています」
トン・スアン氏は、1966年に農芸化学科を卒業後、フィリピンに本部を置く国際稲研究所で研究生として活躍しました。1971年に、ベトナムに戻り、カントー大学で働きました。そして、1974年に日本に留学し、九州大学で熱帯地域における稲作技術に関する研究を行い、同大学より博士号(農学)を取得しました。彼と同僚たちは、稲の開発を目指して、全国各地の農村部へ足を運び、農民の考え方や、意見、および願いに耳を傾けた上で、それぞれの地域に見合った稲作モデルを研究、開発しました。
ビンフューチャー賞を授賞しているトン・スアン教授 |
生前、トン・スアン教授は次のように語っていました。
(テープ)
「農民たちが豊かな生活を送れるように全力を尽くしたいと心から願っています。現在、種子と価格に関する多くの成果を上げたものの、農民たちがこの成果を完全に享受できるようにどうしたいいのかよく考えています」
60年間にわたって農業部門に従事してきたトン・スアン教授は、南部メコンデルタ地域の穀倉地帯の開発に多大な貢献をしてきました。ベンチエ省農業農村開発局のフィン・クアン・ドウック副局長は次のように明らかにしました。
(テープ)
「トン・スアン先生は、ベンチエ省だけでなく、西南部地域全体の農業部門に大きく貢献しました。先生は、農業、農民、農村に対して包括的な視点を持っており、尊敬できる先輩で、仕事に熱心な人です」
他方、南部ティエンザン省では、トン・スアン教授は、害虫に強い高品質の稲品種の発明に貢献しました。ティエンザン省農業農村開発局のファム・バン・ギー博士は次のように明らかにしました。
(テープ)
「トン・スアン先生は、研究と講義に熱意を込めました。先生は、ティエンザン省内の多くの場所において害虫に強い質の高い稲品種の発明という運動を展開しました。さらに、先生は、農民におって親しみやすい農学者であり、農民に生産性の向上方策、稲作技術などを支援する用意があります」
ボー・トン・スアン教授の稲研究は、国内で有名になっただけでなく、アフリカ地域にある貧しい国の農民に多大な利益をもただしました。彼は、シエラレオネ、リベリア、ナイジェリア、スーダン、モザンビーク、アンゴリア、カメルーンなどに、ベトナムの米品種を持ち込んだり、ベトナムの農学者を派遣したり、稲作生産性向上のための技術改善を支援しました。
ベトナムと世界の農業に大きな貢献をしてきたボー・トン・スアン教授は多くの国や国際機関からの賞を授与されました。ごく最近の例で言えば、2023年に、グローバル・フード・ バンキング・ネットワークから、「フードヒーロー(Food Hero)」として顕彰され、「疫病に強いイネ品種の発明と普及」のプロジェクトを実施したことにより、国際科学技術賞「ビンフューチャー(VinFuture)賞」を授賞しました。
優秀な農学者ボー・トン・スアン教授が逝去されたことは、ベトナム農業をはじめとする、国際有識者コミュニティにとって大きな損失となっています。彼が農業部門に残した研究結果は貴重な遺産であり、後輩の農学研究者や、学生たちにとって重要な基盤の存在です。