赤ザオ族の女性たちが身にまとう伝統衣装は、豊かな文化的遺産を体現する芸術作品といえます。この衣装は、頭巾、上着、胸当て、ベルト、ズボンという基本的な要素に加え、銀製の首飾りや腕輪、ボタン、イヤリング、指輪といった様々な装飾品で構成されています。色彩豊かな衣装は、赤、緑、黄、白、黒(藍)の5色を基調としていますが、中でも赤色が主役を演じています。赤ザオ族の人々にとって、赤色は幸福や豊かさ、幸運の象徴であり、ポジティブなエネルギーの源とされています。
カオバン省グエンビン県ファンタイン村のホアン・ティ・ホン・ヴオンさんは次のように語っています。
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「赤ザオ族の衣装で赤色が中心的な役割を果たしているのは、それが私たちの民族のアイデンティティを象徴しているからです。女性の衣装は特に華やかで、多くの装飾品で彩られています。基本となる服は黒色ですが、それを引き立てる装飾品は鮮やかな赤色が主流です。私たちの伝統的な装いは、頭に被る大きな頭巾、首元を飾る銀の首飾り、そして丁寧に手刺繍された服で構成されています。これらの衣装は、一朝一夕には作れません。特に、結婚を控えた娘たちは、長い時間をかけて丹精込めて衣装を準備します。この伝統衣装は、結婚式はもちろん、お正月や他の祝祭日など、人生の大切な節目に着用されるのです」
衣装の中で最も目を引くのは、女性たちが被る大きな頭巾です。この頭巾は、大きければ大きいほど女性の美しさを引き立てるとされ、外側には繊細な手刺繍で植物や花の模様が施されています。また、独特の襟を持つ外套も特徴的で、襟と背中の上半分を美しく飾ります。この部分は衣装製作の中でも最も難しいとされ、高度な技術と美的センスが要求されます。
さらに、首に巻き胸の前に垂れ下がる赤い毛糸の輪は、赤ザオ族の女性の衣装を他の民族のものと区別する重要な要素となっています。加えて、細やかな技巧で服に縫い付けられた銀の装飾も、衣装全体の魅力を一層引き立てています。
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「娘が嫁ぐ際、家族が心を込めて準備する装飾品一式は、単なる飾りものではありません。それは家族の愛情と文化継承の象徴なのです。この大切な装飾品セットには、豪華な首飾り、繊細な腕輪、そして一つ一つに精巧な模様が施された装飾ボタンが含まれます。
赤ザオ族の刺繍技術は非常に繊細で、その価値は2023年2月に国家無形文化遺産として認められました。興味深いことに、彼らは刺繍枠を使わず、布を手に持って刺繍を施します。この技術は世代を超えて受け継がれ、既存の模様に頼ることなく、想像力と創造性、そして記憶力を駆使して行われます。
こうした伝統衣装は、赤ザオ族の人々に大切に守り続けられています。カオバン省グエンビン県ファンタイン村のリー・ムイ・シンさんは次のように語りました。
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「私たちの若い世代は、伝統的な民族衣装を作る技術を受け継ぐ責任があります。お年寄りたちは、その技術を若者に伝えようと懸命に努力しています。これは、先祖に対して、私たちが民族の衣装と文化を大切に守り続けていることを示すためです」
赤ザオ族にとって、この伝統衣装は単なる服飾品以上の意味を持ちます。それは彼らの文化的アイデンティティの象徴であり、世代を超えて受け継がれる貴重な遺産です。さらに、彼らの信仰によれば、この衣装は死後も重要な役割を果たします。亡くなった人と共に埋葬されることで、先祖がその人を認識し、受け入れることができるようになるとされているのです。