蜜蝋花柄プリント技術によるスカート |
全35世帯69人が暮らすホアイカオ集落は、その全住民がザオ族という珍しい村です。彼らの文化において、衣装は特別な意味を持ちます。そして、蜜蝋による花柄プリントは、その衣装文化の中心的な役割を果たしています。この繊細な作業は、主に女性たちによって担われています。
蜜蝋、竹筒、白布といったシンプルな材料から、ザオ族の女性たちの巧みな技によって、美しい花柄の衣装が生み出されます。興味深いことに、この地域では蜂蜜ではなく蜜蝋のみを使用することが決まりとなっています。さらに、蜜蝋の採取にも厳格なルールがあり、蜂が秋に移動した後、春に巣に戻る前という限られた期間にのみ行われます。
ホアイカオ集落の蜜蝋花柄プリント・刺繍グループのリーダー、バン・ティ・リエンさんは、その工程について詳しく説明してくれました。
(テープ)
「花柄をプリントするには蜜蝋が欠かせません。そのために、私たちの集落では何百年も前から蜂が生息する2つの洞窟を大切に保護しています。蜜蝋で描いた模様は布地にしっかりと定着し、色あせることがありません。この技術の素晴らしさを広めるため、ハノイのベトナム女性博物館やドンモー文化観光村でも実演を行ったことがあります」
蜜蝋花柄プリントに夢中になっている女性たち |
蜜蝋による花柄プリントは、完全な手作業で行われる非常に繊細な作業です。一つの製品を完成させるのに、数日から1週間、時には数ヶ月もかかることがあります。その工程は複雑で、布地の磨き上げから始まり、蜜蝋による花柄の形成、藍染め、蜜蝋の溶解、そして乾燥と、いくつもの段階を経ます。中でも最も重要なのが、蜜蝋で花柄を描く工程です。この段階が製品の美しさと価値を決定づけるのです。
花柄を描く際、女性たちは炉の傍らに座り、熱した蜜蝋の入った鉢に筆を浸しながら丁寧に作業を進めます。プリントされる模様は、三角形、十字、銭の円形、花、葉、草、鳥、獣などが主で、これらはすべてザオ族の日常生活や、彼らを取り巻く自然環境とのつながりを象徴しています。ホアイカオ集落のリー・ティ・ズエンさんは次のように語りました。
(テープ)
「丘や山に似た模様は、私たちザオ族が丘陵地帯に住んでいることを表しています。また、銭に似た円形の模様は、ザオ族そのものを象徴しているんです。完成したスカート1枚は120万ドン(約6300円)で売れます。私自身は14歳の時からこの仕事を始めました」
この伝統技術は、地域の人々によって大切に守られ、世代を超えて受け継がれてきました。クアンタイン村人民委員会のホアン・クオック・チャン委員長は、その保存と発展への取り組みについて次のように語りました。
(テープ)
「蜜蝋による花柄プリント技術は、クアンタイン村全体、特にホアイカオ集落のザオ族によって、昔から今日まで大切に維持・保存されてきました。私たちは、この技術を活かして観光客向けの製品開発を進めています。スカーフ、バッグ、クッションなど、観光客が実際に使える製品を作るよう指導しています。また、地域の文化機関と協力して、この技術を次世代に伝えるための研修クラスも開いています。」
蜜蝋花柄プリントを楽しんでいる観光客 |
地域の経済発展と伝統保護の両立を目指し、地方政府はホアイカオ集落をコミュニティ観光村として整備する計画を進めました。2年間の準備期間を経て、2020年にホアイカオ集落は正式にザオ族のコミュニティ観光村となりました。これにより、蜜蝋による花柄プリント技術はさらなる発展の機会を得、観光客向けのより多様な製品が生み出されるようになりました。
ホアイカオ集落でホームステイを経営するチュー・ミン・ドゥックさんは、次のように語りました。
(テープ)
「集落の人々は皆、観光業の発展に向けて協力し合っています。ホームステイを運営していない家庭も、蜜蝋プリントや刺繍、漢方薬、入浴剤、足湯剤などを作り、観光に貢献しています。蜜蝋プリント製品は、装飾用や観光客向けのお土産として人気があります。」
蜜蝋による布地への花柄プリントは、ザオ族の独特な文化を体現する、高度な技術と芸術性を要する伝統工芸です。現代では、日常生活でこの技術を使った伝統衣装を着用する機会は減り、主に祭りや成人式、新年の踊りなど特別な行事の際に使用されるようになりました。しかし、この貴重な技術は今も大切に守られ、次世代に受け継がれています。ホアイカオ集落のザオ族の人々は、この伝統技術をより多くの人々に知ってもらい、持続可能な形で発展させていくことを願っています。