タンロン古城遺跡

ベトナムの首都ハノイは、ホーチミン市やハロン湾、ホイアン市と共にベトナムの有名な観光地として世界的に知られています。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行、特に、今年の4月から拡大した第4波で、ハノイ市の観光業が大打撃を受けています。破産や営業停止が広がっており、人材の流出にも歯止めがかからない状況となっています。

ハノイ市観光局によりますと、2021年前半にハノイを訪れた観光客は前年同期と比べ25%減の290万人です。また、観光収入は8兆1000億ドン（日本円で約390億円）と試算されており、前年同期比57%減ともなっています。ホテルの客室稼働率も24%前後だけです。第１四半期に95％の旅行代理店や観光業者が営業を停止するか破産しました。業界では1万2168人が職を失い、750の宿泊施設が営業を停止しているとしています。

しかし、新型コロナの第4波が全国で抑制されていることを受け、ハノイ市観光局は、感染状況を見極めながら、観光回復計画を立てています。ハノイ市観光局のチャン・チュン・ヒエウ副局長は、観光活動を段階的に再開してゆくと述べ、次のように語りました。

（テープ）

「10月に、ハノイ市民を対象とする観光活動を再開させます。また、11月に、市内の観光業者に疫病を抑制できた地方の住民の受け入れを許可します。そして、12月に、新常態（ニューノーマル）に伴う観光活動を再開させる可能性があります。」

古い村「ドゥオンラム」

一方、ハノイ旅行会社協会は観光活動を再開する前に、「グリーン条件」を実現して安全を確保すべきであるとしています。「グリーン条件」とは、観光活動を行う際に、観光客や旅行会社、観光サービスなどすべてが新型コロナ予防対策を徹底させ、「グリーン観光客」、「グリーン旅行会社」「グリーン観光サービス」として認められるということです。具体的には、観光客が2回目のワクチン接種を受け、ウイルス検査で陰性結果になったこと、旅行会社のスタッフ全員が2回目のワクチン接種を受けたこと、観光活動を大きな泡で包むように観光サービスを提供し、観光客や旅行会社関係者の外部との接触を遮断する「バブル」方式を確保することなどです。当面、ハノイ旅行会社協会は各旅行会社と協力して、古い村「ドゥオンラム」の探検ツアー、バービー国立公園探検ツアー、ハノイ・ニンビン・ナムディンのサイクリングツアーなどいくつかの安全なツアーを試験的に展開する方針です。同協会のフン・クアン・タン会長は次のように語りました。

（テープ）

「新型コロナが収束するまで、各旅行会社は新たな観光サービスや観光商品を開発しなければなりません。これは将来への投資と見なされます。また、観光へのテコ入れ政策もとても重要です。これまで、私たちはハノイ国際観光見本市など観光業の大規模なイベントを行った経験がありますが、新型コロナ収束後、様々なイベントを行う計画を立てています。」

新型コロナの影響で大きな困難に直面しているにもかかわらず、ハノイ市の観光部門は幾つかの成果を収めています。その中には、「タンロン古城の夜間探検ツアー」や、「ホアロー刑務所遺跡の夜間探検ツアー」などの目玉ツアーを刷新しました。これらのツアーは、新型コロナ収束後、国内外の観光客を引き付けるハノイ市の主要な観光商品となると期待されています。ハノイユネスコ旅行クラブのチュオン・クォク・フン会長は次のように話しました。

（テープ）

「各旅行会社が待ち望んでいるのは、新型コロナを早めに制圧することですが、まずは安全な国内観光を開発するためにどうすればいいのかについても関心を寄せいています。各旅行会社は新型コロナ収束後の安全なツアーやサービスの提供を研究していますが、ベトナムが安全な目的地であるということをアピールし、観光PRに全力を尽くすことができる時が早く来るものと期待しています。」

今年の初めから、ハノイの観光業は停滞していますが、いくつかのホテルは、隔離サービスを提供することにより、困難を乗り越えています。また、多くの旅行会社にとって、現在の困難時期は自社の再編成を促すチャンスです。ハノイ観光株式会社のニュ・ティ・ガン社長は次のように語りました。

（テープ）

「弊社は現在の困難を自社の再編成を促すとともに、自社の商品やサービスを刷新するチャンスと見なしています。これからは、持続可能な開発を目指す観光の時代となると思います。観光客のニーズが変わるので、観光業は観光商品とサービスを刷新しなければなりません。」

観光業がコロナ前のように回復するためにはいろいろな創意工夫が必要ですが、ハノイは依然として有名な観光地であり、多くの国内外の観光客にとって魅力的な目的地となることでしょう。