ムオン族の独特な竹暦 |
「ロイ」暦は12枚の竹札で構成され、日付、月、自然現象を示す記号が刻まれています。これらの記号は地域ごとに独自の約束事があり、竹暦は3つの主要な部分から構成されています。月の部分は竹札の先端に刻まれた各月に対応する記号で示され、日の部分は札の側面に刻まれた小さな刻み目で表されます。札の中央部分には、雨や風、嵐の日、商売を避けるべき日、漁に適した日など、自然現象が起こる日の記号が記されています。
ムオン文化遺産博物館のブイ・タイン・ビン館長によりますと、竹暦では1日を16時間に分け、各時間は太陽暦の1.5時間に相当します。時計の代わりに、鶏の鳴き声、日の出、日没、正午、そしてすべてのものが眠る時間といった自然現象によって時を刻みます。ムオン族の1日は夜明け前、鶏が鳴く時間から始まります。この暦は、ムオン族の祖先が何世代にもわたって世界を観察し、月の運動や周期的な特性、ロイ暦における星の運行を通じて時間、日、週、月、年を区別してきた知恵の結晶です。ビン館長は次のように語りました。
(テープ)
「ムオン族は精神文化を非常に重視する民族です。現在のような陰暦や陽暦がなかった時代から、彼らは竹暦を使用してきました。ムオン族には『米は家の棚に、水は豚の水桶に、日は過ぎ月は来る』という諺があります。まさにこの『日は過ぎ月は来る』時の流れを、ムオン族は独自の暦で計算していたのです。」
ムオン文化遺産博物館のブイ・タイン・ビン館長 |
竹暦の体系はロイという星の移動に基づいて作られており、ムオン族は独自の月の名前で一年を表します。トム・ガン月は正月、カイ・チョン月は2~3月、トム・チョン月は4月、キム・チョン月は5~6月、コア・ロ月は7月、キム・タ月は8~9月、トム・タ月は10月、カイ・タ月は11~12月に対応します。ブイ・タイン・ビン館長はさらに次のように説明します。
(テープ)
「この暦は月とロイ星の運行を観察して計算するため、吉日と凶日を判断できます。ムオン族には『佳い日』『狩りの日』『魚の日』という概念があります。狩りに出かける時は狩りに適した日を選び、漁に出かける際には魚の日という印をつけます。結婚や家の建築、門作りなど、あらゆる重要な事柄において、人々はロイ暦で吉凶の日時を確認するのです。」
竹暦は同じでも、地域によって呼び方が異なります。タンラック県やカオフォン県では「ドイ暦」と呼び、ラックソン県では「ロイ暦」、その他の地域では「ヴァック・ベン」と呼ばれています。現在、ホアビン省には数百年前に作られた歴史ある暦が保存されており、ムオン・ヴァン暦やムオン・ビ暦などが何世代にもわたって大切に受け継がれています。
ホアビン省キムボイ県のブイ・チ・ルオンさんによると、12本の竹札は1か月を3つの旬に分けて表しています。上旬は「カイ」、中旬は「ルオン」、下旬は「コイ」と呼ばれます。月の最初の10日間はカイ1日からカイ10日、中間の10日間はルオン1日からルオン10日、最後の10日間はコイ1日からコイ10日と呼ばれます。ルオンさんは次のように語りました。
(テープ)
「ムオン族の1か月における最初の10日間、中間の10日間、最後の10日間は、それぞれ『根』、『幹』、『梢(こずえ)』と呼ばれます。これは木の成長になぞらえた考え方で、木が正常に発達する時、下から根、幹、梢があり、上には花と葉がつくという自然の摂理に基づいています。」
独特の価値、民間の知識を集約したホアビン省ムオン族の竹暦(ロイ暦)は、2022年に国家無形文化遺産として表彰され、今日のムオン族の生活における遺産価値の保存と発展に重要な貢献をしています。