ハニ族の伝統的な編み笠 |
(ハニ族の音楽)
古くから、伝統的な編み笠はハニ族の人々の暮らしと密接に結びついてきました。この笠は男女を問わず使用され、日よけや雨よけとして、田畑や焼畑での作業時には必需品となっています。
雨の中で笠を被った後は、台所の棚に吊るして乾燥させます。その際、台所の煙で燻すことで、一つの笠を数年間使用するための耐久性を持たせているのです。
ハニ族の慣習で特に興味深いのは、娘が嫁入りする際の決まりです。花嫁は民族の伝統衣装を着て、背中に籠を背負うだけでなく、必ず編み笠を被り、嫁ぎ先に向かう道中で笠を落とさないよう細心の注意を払わなければなりません。
シンタウ村のチャン・コー・ポーさんは次のように説明します。
(テープ)
「娘が嫁入りする時、両親は娘に笠を用意します。笠は両親が娘に託す嫁入り道具のようなもので、生家の門から嫁ぎ先まで笠を被って行き、その後で儀式を行うのです。この贈り物は非常に大切に保管されており、ハニ族の伝統と深く結びついています」
ベトナムの多数民族であるキン族の菅笠とは異なり、ハニ族の編み笠はよりコンパクトで、頂上から縁まで細い竹ひごで緩やかに湾曲させて作られています。
材料には、森に自然に生えている「ハーク」という木を使用します。この木は丈夫で柔軟性があり、折れにも、割れにも強く、虫害にも強いという優れた性質を持っています。
チャン・チャン・シンさん |
シンタウ村で笠作りの専門家であるチャン・チャン・シンさんは、編み笠が人々の生活と密接に関わっているため、ハニ族なら誰でも幼い頃から笠を編むことができると話します。シンさん自身も祖父や父から笠編みを学び、12歳で熟練した技術を身につけました。
現在でも、彼は民族の伝統的な笠編みの技を継承し、家族のためだけでなく、村の人々の需要に応えたり、文化・芸術団体の笠踊りの公演用にも笠を編んでいます。
シンさんは製作過程について詳しく説明します。
(テープ)
「編み笠の材料を手に入れるために、男性は刀を持って森に入り、折れたり先端が欠けたりしていない『ハーク』の木を選びます。先端が折れた木は、割る時に脆くなりやすく、虫害にも遭いやすいからです。持ち帰って乾燥させた後、よく研いだ刀で滑らかに仕上げます。この滑らかに仕上げる工程が最も難しく、細心の注意と技術が必要です。笠の内側には支えるための枠を編み込み、外側の層は密に編んで雨が浸み込まないようにします。一つの笠を完成させるのに3日かかります」
シンタウ村には約100世帯があり、全てがハニ族で構成されています。シンさんのように笠編みの技を維持している人はまだ多くいますが、現在、シンさんと他の高齢者たちは、民族の伝統的な技術を維持するために若者たちに笠編みを教える教室を開いています。シンさんの話です。
(テープ)
「若い世代で、習いたいという人がいれば教えています。ハニ族の伝統的な笠編みの技術については、私は全力で技を伝承し、共にハニ族の文化的アイデンティティを保持していきます」
シンさんをはじめ、ハニ族の文化を愛する人々の願いは、伝統的な笠編みの技術を保存し、発展させることです。笠の姿がハニ族の人々と共に畑に上がり、花嫁を嫁ぎ先に送る際に、代々受け継がれるハニ族の美しい文化的特色として維持されることを心から願っています。