「風禁忌」祭りに向けて身支度を整えるザオ族の女性たち。

毎年旧暦の4月4日、クアンニン省ホアインモ村に住むザオ族の村々では、「風禁忌祭り」という特別な祭りが開催されます。この祭りの最も特徴的なところは、なんと村の人々が一日中、家を空にするということなんです。

では、なぜそんなことをするのでしょうか。ザオ族の人々は、この日に家を空にしておくことで、風の神が災いや悩みを持ち去り、代わりに幸運と恵みをもたらしてくれると信じられています。そのため、早朝から家族全員が家を出て、日が暮れるまで家に戻らないのです。

この日、村の人々は「旧暦4月4日の市場へ遊びに行く」と言って、みんなで祭りに参加します。新しい仕事を始めたり、畑仕事や家の建設などの作業は一切行いません。それは、不吉なことが起こるかもしれないと信じられているからです。

祭りに参加した地元のグエン・チュオン・スアンさんとチウ・モック・チャンさんの感想を伺いました。

（テープ）

「この風禁忌祭りがあるので、人々はとても楽しく、盛り上がります。多くの人が楽しんで参加してくれます」

（テープ）

「ザオ族にとって意味深い一日です。人々が交流し、語り合い、食事を共にする貴重な機会であり、コミュニティの結束を強めます」

祭りで村落対抗の綱引き競技に沸く会場

祭りで最も賑わうのは市場です。山菜のタケノコ、ヨモギ餅、蜂蜜、伝統織物など、様々な地元の産物が並びます。この市場は単なる商取引の場ではなく、ザオ族の文化を体現する「生きた博物館」のような役割も果たしているのです。

祭りでは、文芸コンクール、棒押し、綱引き、コン投げなどの民族スポーツ競技も行われます。特に若者たちにとっては、友情を育み、歌垣で結婚相手を探す絶好の機会となっています。

地元のチウ・パー・ムイさんは次のように話しています。

（テープ）

「この地に生まれた者として、自分の民族が持つ独特の文化的特徴を誇りに思います。この祭りを通して、民族の文化が皆に紹介されることを、とても嬉しく思っています」

「風禁忌」の国家無形文化遺産認定を祝う式典

（現場の音）

そして今年、この「風禁忌」は、文化・スポーツ・観光省によって国家無形文化遺産に認定されました。これは地元の人々にとって大きな誇りです。

地方行政府のタン・バン・ザオ氏は、「この認定は、私たちザオ族コミュニティが、美しい伝統的風習を維持・継承・保存してきた成果です」と誇らしげに語っています。

今後は、この貴重な文化遺産を若い世代に伝え、地域の観光開発と結びつけながら発展させていく計画だとのことです。

この「風禁忌」は、人間と自然の調和、現実世界と精神世界の和合を表現した、とても美しい伝統です。コミュニティの結束や愛情、そして平和への願いが込められた、ザオ族の心を象徴する祭りなのです。