豊作祈願祭を主宰している集落長のマー・ティ・ハオさん
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カオバン省クアンホア県ゴックドン村のチフォン集落では、集落長のマー・ティ・ハオさんを中心に、村人たちが祭りの準備に忙しく取り組んでいます。祭りの日には、村人たちが神々に特産品や郷土料理を供物として捧げます。祭りの準備は村人たちの会議で決められ、日程の選定や供物の準備、儀式の執行などが分担されます。通常、この地域での豊作祈願祭は旧暦4月末か5月初めの「酉の日」に開催され、勤勉さと豊かさを象徴する意味があるそうです。集落長のハオさんは次のように語りました。
(テープ)
「チフォン集落では、長年にわたり豊作祈願祭を開催する伝統が続いています。この祭りでは、村人たちの商売繁盛と豊作を祈ります。準備のため、集落の各家庭が供物や食べ物の購入費用を寄付します。祭りの当日には、40世帯ある集落の全家庭から1人ずつが参加し、皆で協力して行事を盛り上げます」
儀式は午後に集落の土地神の祠で行われ、集落長が執り行います。供物には豚の頭、肉、もち米、酒が含まれ、香を捧げ供物を祭壇に置いた後、祭主が天候と豊作を祈ります。
(現場の音)祭主のお祈り
儀式は代々伝わる習慣に従って厳粛に行われ、特に「陰陽の許可」と呼ばれる3回の祈りを通じて集落の守護神の加護を求めます。チフォン集落のファン・ティ・アインさんは次のように語りました。
(テープ)
「私たちの集落では、年に1回しか稲作ができません。2回目の作付けはトウモロコシを植えるため、1年の暮らし向きはこの稲作の出来不出来で決まってしまいます。そのため、毎年欠かさず豊作祈願祭を行い、集落長が心を込めて祈りを捧げるのです。土地神への供養が終わると、村人たちが集まって談笑し、美味しい食事を楽しみながら、お互いの仕事の様子を尋ね合います。そして、今年はどの品種の稲を植えれば収量が上がるか、田植えの計画はどうするかなど、農作業について熱心に話し合うのです」
豊作祈願祭は村人の絆を深めるチャンスでもあります。 |
この豊作祈願祭は、カオバン省のタイ族とヌン族の農業生活に欠かせない伝統行事です。単なる宗教的な儀式だけでなく、村人たちが集まって食事を共にし、農業技術を話し合い、コミュニティの絆を深める重要な機会となっています。
チフォン集落の豊作祈願祭には、今日まで大切に守られている伝統があります。それは、祭りの宴会に参加する際、各自が自分の椀と箸を持参し、祭りが終わると皆で協力して片付けを行うというものです。村人のノン・ティエン・ズオックさんは次のように語りました。
(テープ)
「集落の人々は皆、この祭りの日を心待ちにしています。この日は、互いに顔を合わせ、効果的な作物の育て方や、どうすればより多くの米が収穫できるかを学び合える貴重な機会なのです。そして何より、私たち民族の美しい文化を皆で守り、次の世代に引き継いでいく大切な機会でもあるのです」
(現場の音)
祭りの後半では、賑やかな音楽とともに麒麟獅子舞が披露され、民謡や伝統的な歌が歌われます。また、踊りや武術の演武も行われ、伝統文化の継承と武を重んじる精神が表現されます。
このように、カオバン省の豊作祈願祭は、テイ族とヌン族の人々にとって大切な民間信仰となっています。天地と人間を結ぶ精神的な架け橋であり、自然との共生を願う彼らの思いが表現されています。さらに、民族間の団結を強め、若い世代に先祖伝来の美しい伝統を伝える教育的な役割も果たしているのです。