伝統工芸村の保存と開発は、農村部経済構造転換に重要な役割を果たすとともに、農村部の包括的かつ持続可能な開発に貢献し、農民の物心両面での生活改善に繋がっています。
ベトナム伝統工芸村協会によりますと、ハノイ市は国内で一番多くの伝統工芸村が集中した地方となっています。現在、ハノイ市内には、全国52職種の中の47の職種を持つ1350あまりの伝統工芸村があります。近年、これらの伝統工芸村は、収益、売上高、輸出額の面において成長を遂げてきました。そのうち、およそ100の伝統工芸村は、年間100億ドン~200億ドン、約5859万円~1億1719万円、およそ70の伝統工芸村は200億ドン∼500億ドン、約1億1719万円~2億9296万円、および、約20の伝統工芸村は500億ドンを超える収益を得ており、地元の歳入予算に大きく貢献しています。伝統工芸村の開発は身体の不自由な人の就労にも貢献しています。統計によりますと、24の区、県、町における伝統工芸村の収益の総数は年間22兆ドン、約128億7939万円を超えています。
さらに、伝統工芸村の開発は、収入増加に繋がり、農村部における貧富格差の縮小に貢献しています。伝統工芸村に住む労働者一人当たりの平均月収は、400万ドン~550万ドン、2万円~3万円程度に上っており、農業労働者と比べ高い水準に達しています。そのほか、ナムトウリエム区、テイホー区、ホアイドゥック県、バクトウリエム区、タックタット県などにある伝統工芸村に住む労働者一人当たりの平均年収は5000万ドン、約29万円を超えているとのことです。
伝統工芸村の価値を活用するため、近年、複数の伝統工芸村は、製品の生産過程に創意工夫を凝らして、新たなやり方を導入したことにより、貿易相手、国内外の観光客の注目を集めてきました。
古代のひょうたん窯から様式化された円形の建築複合体(Dương Đình Tường撮影) |
バッチャン陶器村では、陶芸家ハー・ティ・ビン氏の投資で建設された、古代のひょうたん窯から様式化された円形の建築複合体は、陶器村の来訪者にとって観光場所となっています。この建築物は、伝統工芸村の真髄を披露し、バッチャン陶器村の価値を国内外の観光客に紹介する目的として建設されたそうです。
陶芸家ハー・ティ・ビン氏(Dương Đình Tường撮影) |
クアンビン陶磁器有限会社の社長である陶芸家ハー・ティ・ビン氏は次のように明らかにしました。
(テープ)
「バッチャン陶器村の製品が国内外の観光客から好まれたことに嬉しく思っています。来訪者は、バッチャン陶器村の由来に耳を傾けたり、陶器製品の真髄を鑑賞したり、郷土料理を味わったりすることが出来ます。私たちは、来訪者のニーズに対応する可能性があります」
一方、シルク村「バンフック」は、国内外の観光客にとって有名な観光地として知られています。現在、この村の行政当局は若い世代にシルク織りを伝えることを重要な任務と位置付けています。ハドン区バンフック・シルク織り村協会のファム・カック・ハー会長は次のように語っています。
(テープ)
「私たちは、若者たちにシルク織りの職業を引き継げるよう説得しました。これまでに、多くの若者は、勉強しながら、シルク織り作業にも参加しています」
そのほか、伝統工芸品の競争力向上を目指して、ハノイ市の関連機関は、常に国内外においてイベントや、コンテスト、フェスティバル、見本市を行い、伝統工芸村の製品をPRし、ベテラン職人の交流を奨励してきました。
その一方で、ハノイ市人民委員会は、2024年のハノイ市農村産業発展計画を実現しています。この計画は、伝統工芸村の持続可能な開発、伝統文化の保存、労働者の収入増加、ハノイ市全体の社会経済開発に貢献するとされています。同時に、伝統工芸村開発へのあらゆる経済セクターのリソースを活用した上で、新農村建設を実現するとともに、工業化・農業農村の近代化に沿った経済構造の転換を推進するのに役立つと期待されています。
去る5月、ハノイで、市内の伝統工芸村で活動中の企業、協同組合、経営世帯の困難解決、経営生産の推進に関する対話会議が行われました。席上、発言に立ったハノイ市人民委員会のグエン・マイン・クエン副委員長は次のように語っています。
(テープ)
「ハノイ市行政当局は、常に企業、協同組合、経営世帯とともに歩み、経営生産上の困難の解決、特に、行政手続きに関する問題点の解決、経営投資環境の改善を断固として実現する方針です。各級部門は、『政府が奉仕する。企業が貢献する。 信頼たる社会、幸せな市民』というコアバリューに基づいて、文明かつ近代的な首都圏の建設において引き続き企業、市民とともに歩んでいきます」
さらに、2050年を見据えた2024年∼2030年期のハノイ市内の伝統工芸村総合開発草案の整備が急がれています。これは、伝統工芸村の持続可能な開発を推進することが狙いです。これらの取り組みは、伝統工芸村の変化に前提を生み出すとともに、農村経済開発事業に貢献するとされています。