タイハイ村の光景(写真提供:タイハイ村) |
この村は、2022年にUNWTO=国連世界観光機関により「世界の最もよい観光村」として認定されました。ベトナムの村がこの称号を取得するのはこれが初めてです。そのほか、タイハイ村は「幸せな村」とも呼ばれ、伝統文化の継承・共同体の結束・持続可能な開発の象徴ともなっています。
タイハイ村伝統の高床式の住宅保存村は、タイグエン市ティン・ドゥック村のクオン集落とミーハオ集落にまたがり、総面積はおよそ25ヘクタールで、四方を山々に囲まれました。ここには約200人の住民が暮らしています。この村では、テイ族、ヌン族、カオラン族、サンチー族、キン族など、多民族が居住しており、3世代・4世代が同居する家族も珍しくありません。
タイハイ村では、経済発展と民族文化の保存が一体となって進められています。村の伝統的高床式の住居や農具・家具などの有形文化は、実際に住民の生活の中で復元・活用されており、古来の景観と機能が共存しています。伝統文化の継承は、村にある各家庭の日常の中で行われています。
観光客がタイハイ村を訪れる(写真提供:タイハイ村) |
子どもたちは学校で義務教育を受けると同時に、民族の言葉や伝統音楽、民謡などを村の大人から学びます。また、郷土料理や精神的儀礼についても記録され、次世代に受け継がれています。村では、伝統産業ごとの保存エリアも整備されています。タイハイ村の住民の一人であるレ・ティ・ハオさんは次のように述べました。
(テープ)
「私は多数民族であるキン族の出身で、もともと編み物ができなかったのですが、タイハイ村に住むことにより、タイ族の年配の方々に教わり、今では子どもや孫にも伝えています。村の伝統文化を皆で守り続けたいと思っています。」
タイハイ村は2014年に正式に観光地として認定されましたが、他の観光地と違い、住民は「共に暮らし、共に働き、共に分かち合う」精神を守り続けています。
個人の収入や財産はなく、農業・観光などの収益はすべて村の共有基金に集められ、食費・教育費など生活に関わる全てが村によって賄われているという、まさに「共生型共同体」です。タイハイ村の副村長のレ・ティ・ガーさんは、最初から観光を運営するのは文化を守るためのものであることを意識しました。
(テープ)
「この村を築き上げてきた先人たちの努力を、後の世代がその伝統文化を受け継ぐ責任があります。そして、私たちは伝統文化を理解し、知識を磨いて、訪れる人々にしっかり伝えていく必要があります。私たちは“文化の観光大使”としてその役割を果たしたいと思っています。」
タイハイ村はUNWTOから世界の最もよい観光村の称号を獲得した
(写真提供:タイハイ村)
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この村には、高級ホテルはありません。代わりにあるのは、伝統的な高床式の住まいと、素朴ながらも人情にあふれた家庭の食卓です。観光客は、民族の旧正月「テト・タイ」空間や、ハーブ足湯、伝統儀礼など、五感で文化を体験できる空間を楽しむことができます。
こうした人間・自然・文化の調和が生み出す美しさと平穏さを持つタイハイ村はタイグエン省の人気の観光地になっています。特に、2022年には、UNWTO=国連世界観光機関から世界の最もよい観光村の称号を獲得しました。現在、毎年、世界40か国から観光客数千人がこの村を訪れます。