ブークアン国立公園 |
2002年に設立されたこの国立公園は手つかずの自然景観に加え、希少な動植物が数多く生息しており、その生物多様性は国内外から注目を集めています。
この国立公園は、ホーチミン・ルート沿いに位置し、「ハティン省の緑の宝石」とも称される自然遺産です。その中には、絶滅の危機に瀕した動植物種や、IUCN(国際自然保護連合)およびベトナムのレッドデータブックに登録された重要な種も数多く含まれ、厳重な保護が必要とされています。
ブークアン国立公園では、これまでに1600種以上の高等植物が確認されており、そのうち94種はIUCNおよびベトナムのレッドブックに記載されている希少種です。特に、この国立公園には686種の薬用植物および339種の木本(もくほん)植物が生育しており、その中に、経済的価値が高い樹木が含まれています。ブークアン国立公園のグエン・ザイン・キー所長は、次のように語りました。
(テープ)
「ブークアン国立公園は、その卓越した生物多様性により、2018年に「ASEAN遺産公園」として認定されました。これは、ベトナム、そしてハティン省にとって、国際的な自然保護の分野における大きな栄誉です。現在、我々はこの重要な生物圏と生物多様性保護区を厳格に保護しています。」
これまでの調査によりますと、ブークアン国立公園では、哺乳類94種、鳥類315種、爬虫類58種、魚類88種、蝶類316種が確認されています。その中には、26種の哺乳類、10種の鳥類、16種の爬虫類など、絶滅の危機に瀕した種も多数含まれており、保護の対象となっています。
この地は、世界的にも極めて希少な動物の発見地としても知られています。1992年には「サオラ(Sao la)」、そして1993年にはオオホエジカ(Mang Vũ Quang)」という2種の新種哺乳類が、世界で初めてこの地で確認されました。ブークアン国立公園の元職員のチャン・ビン・トゥ氏は、そのときの様子を次のように振り返りました。
(テープ)
「ベトナムのサオラは、真っすぐに伸びた黒い2本の角が特徴です。このサオラが発見されたのは、ブークアン国立公園だけです。当時、国内外の科学者や記者たちは、この豊かな原生林の存在に驚きを隠せませんでした」
近年、USAID=アメリカ国際開発庁の支援により実施されてきた「生物多様性保全プロジェクト(VFBC)」の一環として、ブークアン国立公園の85か所でカメラトラップを設置し、SMART=保全監視評価ツールを用いた脅威分析など、科学的なアプローチで生物多様性の調査と保全活動が進められています。USAID=アメリカ国際開発庁が支援する生物多様性保全プロジェクト(VFBC)で、保全コンポーネントを統括するニック・コックス氏は、次のように語りました。
(テープ)
「ブークアン国立公園は、今もなおゾウやオオホエジカ(Mang lớn)といった希少動物が確認される数少ない森のひとつです。これらは、近年ではウェブ上でしか見られないような極めて希少な存在です。これは、ブークアン国立公園での保護活動が成果をあげている証拠です。USAIDの支援を通じ、管理当局とスタッフの保全努力が今後さらに強化されていくことが期待されます。」
ブークアン国立公園は野生動物の保護・ケア・再導入にも力を入れている |
ブークアン国立公園では、単なる保護だけでなく、野生動物の保護・ケア・再導入にも力を入れています。過去2年間で642頭の動物を受け入れ、587頭を自然に返すことに成功しています。ブークアン国立公園のグエン・ベト・フン科学・国際協力部長は次のように述べました。
(テープ)
「近年、ブークアンでは救護や保全、野生動物の再放獣に特に力を入れています。これまでに約1,500頭の動物を受け入れ、その多くがベトナムや世界のレッドデータブックに掲載される希少種です。」
これらの地道な努力により、ブークアン国立公園はベトナム国内で最も生態系の多様性に富んだ場所の一つとして、国の自然環境の豊かさと持続可能性を支える重要な役割を果たし続けています。