ウーミンハーの森 |
南部メコンデルタ地域にはウーミンの森が広がっています。その中で、ウーミンの森の中を流れるチェムチェム川とカイタウ川が森を二分し、北には「ウーミントゥオン」と南には「ウーミンハー」の森があります。ウーミンハーの森は、手つかずの自然景観と豊富な動植物があるジャングルとして知られています。
現場の音
広さ4万5千ヘクタールにおよぶウーミンハーの森は、カマウ省のウーミン県とチャンバントゥイ県にまたがり、ユネスコ=国連教育科学文化機関により世界生物圏保存区の中核地の一つでもあります。開拓の時代、「ウーミン」という名は、人々に果てしなく広がる原生林のイメージを強く印象づけました。文化人であるニャム・フン氏は、次のように語りました。
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「作家グエン・バン・ボンは、その代表作『南の森の大地』の中で、次のように書きました。“開拓者がカマウ岬にたどり着いたとき、前には太平洋が広がり、後ろには生き抜くために闘わねばならぬ密林が迫っていた。すなわち、ウーミンの森は神聖な森で、自然の厳しさ、猛獣、そして病と闘う決意なくして、生き残ることはできなかったのです」
ウーミンハーの森のハチミツ |
ウーミンハーの森では、野生動物にまつわる数々の物語が人々を魅了してきました。中でも語り草となっているのが、巨大な蛇の伝説です。この「蛇神」を目にする者は稀で、その存在はまさに伝説と現実のはざまにあります。かつてウーミンハーの森で生計を立てていた一人であるカマウ省チャンバントゥイ県に暮らすグエン・バン・ウットさんは次のように語りました。
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「ウーミンハーには、いくつかの巨大なコブラが棲んでいます。昔、私たちは田畑で暮らしていたので、よく知っています。ここにはニシキヘビ、蛇、シカ、野生のミツバチ、そしてサルなど豊かな種類の動物が棲んでいます」
ウーミンハーの森の歴史は、野生動物の“飼いならし”とも言える、人と自然との共生の物語について言及しました。その中で最も成功した例が、野生のハチを誘い、巣を作らせて蜂蜜を採るという営みです。
カマウ省チャンバントゥイ県のホー・バン・ホアンさんは次のように語りました。
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「祖父の代から父、そして叔父の代まで、ミツバチを飼いました。私も13歳の頃から今日まで、約60年にわたり森の中でミツバチを飼い、生計を立ててきました。森の暮らしは外の生活に比べて何倍も困難です。先祖代々受け継がれてきた養蜂という仕事には、苦労だけでなく喜びもあります」
カマウ省のウーミンハーの森では、年間約700トンの蜂蜜が収穫されています。ウーミンハー産の蜂蜜は、ベトナムの特産品ギフトトップ100に選ばれるほど高い評価を受けています。この養蜂は、地元の住民の生活水準を向上させる重要な生業です。チャンバントゥイ県にあるエコ観光地「ムオイ・ゴット」の代表、ファム・ズイ・カインさんは次のように語りました。
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「この観光地は、ウーミンハー国立公園に近いです。ここは自然林の面積が広く、数多くのミツバチが来ます。観光客は徒歩や小舟に乗って森を巡り、蜂の巣を間近に観察することができます。希望すれば蜂の巣に接近し、何千匹もの蜂と向き合うスリルを体験することもできます。その後、木陰で自分たちが収穫した蜂蜜などを味わうことができます」
現在、カマウ省にあるウーミンハーの森林面積は約3万5千ヘクタールにのぼっています。中には100種以上の植物、198種の野生動物を含む豊かな生態系を有しています。訪れる人々は、まるで家族の一員のようにもてなされます。
ジャーナリストのグエン・ティエン・チン氏は次のように述べました。
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「カマウの人々は非常に温かく、誠実です。家にあるものは何でも出してもてなしてくれます。そのため、観光客はまるで自分の家に戻ったかのような気持ちになります。」
現在、ウーミンハー地域ではインフラ整備が進められ、観光産業の開発が推進されています。カマウ省では毎年「ウーミンの森の香り」というイベントが開催され、地元の魅力を全国にPRし、ベトナム最南端の観光の目玉として注目されています。