ブー・コアン元副首相（VGP撮影）

ベトナムのブー・コアン元副首相は去る6月21日に逝去しました。86歳でした。ブー・コアン氏は、多くの重要な職務を務め、ベトナムの改革・刷新・開放・国際統合の事業に大きく貢献した人物の一人でした。

生前、ブー・コアン氏は知識が豊富なため、外務次官、貿易大臣などの異なる職務に就いても、任務を立派に果たしました。ブー・コアン氏は貿易大臣として、ベトナムとアメリカとの貿易協定の締結、WTO世界貿易機関、ASEAN東南アジア諸国連合、APECアジア太平洋経済協力会議などへのベトナムの加盟に関する交渉に出席しました。彼は、深い知識を備えていただけではなく、国の利益を第一にした人物であると言われています。

ブー・コアン氏は次のように語ったことがありました。

（テープ）

「如何なる仕事に対しても、民族にとっての最善の利益を考慮します。これは、私たちの時代、または、今日の時代の人々の終始一貫した方針です。厳しい交渉が続いていても、国の利益、具体的には国の発展のためという要素を第一にしなければなりません」

外交部門において、ブー・コアン氏は、先輩として各世代外交幹部の育成に貢献した人でもありました。グエン・フー・ビン元外務次官によりますと、ブー・コアン氏には、交渉において明晰で率直な態度をとるという優れた外交官の資質がありました。彼は、交渉の原則を守る一方、それぞれの相手に合わせて柔軟に対応できたということです。

経済専門家のファム・チ・ラン氏(VTC撮影)

一方、経済専門家のファム・チ・ラン氏の記憶の中で、ブー・コアン氏は交渉の達人でした。彼は、相手に親近感を与えるように、言葉を巧みに使っていた人でした。

ラン氏は次のように思い出しています。

（テープ）

「ブー・コアン氏について、私にとって忘れがたい記憶は、2001年末頃、ベトナムの代表団がベトナムとアメリカの自由貿易協定の交渉に参加するためアメリカを訪問したときのことです。ワシントンでのレセプションパーティーにおいて、ブー・コアン貿易大臣は、招待講演をされました。その時、彼は演台に立って、『昨夜、僕は夢を見た。本日のパーティで、アメリカ人の皆さんがベトナムで縫ったシャツを着用して、ベトナムから輸出されたエビを食べ、ベトナムの美味しいコーヒーや紅茶を飲むという夢だ』とにこやかに笑いながら、発言しました。そうすると、観客全員が驚き、喜び、拍手を送りました。アメリカ側の代表は、『その夢は早めに現実となるはずだ』と笑いながら返事してくれました」

ブー・コアン氏は定年退職しても、国の状況に配慮しており、党と国家に責任ある率直な意見を提出していました。彼は常に、外交や、国際統合などに関連する多くのセミナーや座談会に招待されました。ブー・コアン氏の演説は明確で分りやすいと評価されました。

ブー・コアン氏は次のように語りました。

（テープ）

「国際統合がもたらす成果は測定できるものもあれば、目に見えないけれど、非常に重要な成果もあります。重要な成果とは何でしょう？私の考えでは、まずは国際統合に対する社会のコンセンサスを得ることです。次は、世界を十分に理解できるようになること。昔、世界、特に資本主義の世界をよく知る人の数はとても少なかったです。外交官である私たちでさえも、客観的な要因によって、あまり知りませんでした。現在では、全国民は地球市民となり、もちろん程度の差はありますが、うろたえることはありません。これはとても重要なことです。そして、国際社会に参入することにより国際的な場におけるベトナムの地位は高まるようになります。その昔、世界各国の人々は、ベトナムについて知っていることといえば、ベトナム戦争のことだけでした。しかし、現在、多くの国々では、ベトナムを競争の相手国と見なすようになっています」

ブー・コアン氏は党と国家から、一等独立勲章、一等労働勲章、二等抗米救国抗戦勲章、入党60周年バッチなどを授与されたほか、旧ソ連から各民族友好勲章、ラオスからは一等自由勲章、そして、日本からは旭日大綬章を受章しました。