伝統的なドラ演奏の維持に生涯を捧げる村長

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(VOVWORLD) - クティエウさんの努力により、現在、ディンラク村にはドラの演奏ができる人は200人あまりいます。その中の30人は村のドラ・クラブに参加しています。

ベトナム中部高原地帯テイグエン地方の文化について触れるならば、この地に暮らす少数民族のドラ(鐘)の文化を抜きにして語ることはできません。しかし、現代生活の影響でドラ文化が消滅してしまう恐れがあります。こうした事態を前に、ドラ演奏をはじめ、ドラに関する文化に生涯を捧げた人がいます。ラムドン省ジーリン県ディンラク村ズエ集落の村長クティエウさんはその一人です。

伝統的なドラ演奏の維持に生涯を捧げる村長 - ảnh 1クティエウさん(真ん中)

(テープ)ドラの音

コントゥム省、ザライ省、ダクラク省、ラムドン省、ダクノン省の5つの省からなる中部高原地帯テイグエン地方にはバナ族、ソダン族、コホ族、エデ族、ザライ族など17の少数民族が暮らしていますが、これらのほとんどの民族は共通してドラの文化を誇っています。

ドラは金属製の打楽器の一つで、紐で吊り下げられた円盤をばちで叩いて打ち鳴らすものです。ドラの音は、人の心や感情を表しています。人間の悲しみ、喜び、怒り、期待などを示したり、地域の歴史を物語ったりします。昔から地元の人々は、赤ん坊が生まれた時やひとが亡くなったとき、冠婚葬祭など、人生の節目に起こるさまざまな行事にドラをよく用います。また、テイグエン地方の人々はドラが人間と神との橋渡し役をつとめていると信じています。ですから、ドラはこの地方の神具(しんぐ)と言っても過言ではありません。そして、ドラは貴重な財産で、親から子へと受け継がれます。かつて、ドラは2頭の象、あるいは20頭の水牛に相当した時代もありました。

こうしたドラの演奏空間は2005年11月、ユネスコ=国連教育科学文化機関により、人類の口承および無形遺産の傑作として認定されました。しかし、生活の近代化の影響で、ドラの演奏空間が小さくなっているため、この空間の保存は差し迫った課題となっています。

ラムドン省ジーリン県ディンラク村ズエ集落の村長クティエウさんは少数民族クホ族出身で、今年71歳ですが、14歳のとき、ドラの演奏を習い始めました。村々を回ってドラのベテラン演奏者から習ったクティエウさんは優秀な演奏者として知られています。20年前にクホ族の村々でドラの音があまり聞こえない現状を前に、クティエウさんは死ぬまでの生涯をドラの保存に捧げることにしました。彼は村の家を回って村人にドラ演奏の練習の再開を促したほか、子どもにドラの演奏を教える教室を開きました。クティエウさんの話です。

(テープ)

「当初は私の言葉に関心を払ってくれた人はほとんどいなかったので、とても大変でした。子どももゲームなどに夢中になり、ドラに興味を持ちませんでした。また、ドラの演奏に詳しい人も少数でした。そのため、私はいろいろと話し合って何回も説得をくりかえしました。これにより、村人は徐々に納得してくれました。現在、私の教室の中で中学校に通っている子どもはドラの演奏を習得するのが最も早いです。年を取った人は習得に時間がかかります。今は夏休みなので、村の子どもに教えることに集中しています。また、かつて開いた教室に通っていた子どもを呼び込み、演奏を忘れないよう復習を促しています」

伝統的なドラ演奏の維持に生涯を捧げる村長 - ảnh 2子どもにドラの演奏を教えているクティエウさん

クティエウさんの努力により、現在、ディンラク村にはドラの演奏ができる人は200人あまりいます。その中の30人は村のドラ・クラブに参加しています。村人の一人の話です。

(テープ)

「クティエウさんは熱心に教えてくれました。私たちは彼の姿をみて一生懸命習いました。私は彼に教えてもらった技術を覚えました。私の娘と妻もクティエウさんの教室に通っていました。クホ族の独特な文化の一つであるドラに関する文化の保存に貢献したいと思います。クホ族の村々からドラの音が永遠に響き渡ることを期待しています」

ディンラク村人民委員会のチュオン・クォク・フォン副委員長によりますと、クティエウさんの努力により、ドラに関する文化が回復・発展しています。クティエウさんの教室により、数多くの村人がドラの演奏に関する技術を身につけているほか、彼はドラの演奏空間である雨乞いや新米祭りなどの伝統的な行事の再開を村人に働きかけたのです。また、ドラの演奏ができる人が増えていることにより、ドラの交流会や演奏コンテストも頻繁に行われており、多くの参加者を引き付けています。ディンラク村は2018年と2019年の2年連続で、ジーリン県のドラ交流会を主催しました。新型コロナの影響で停止となりましたが、年内に第3回ドラ交流会を行う計画があるとしています。フォン副委員長は次のように語りました。

(テープ)

「クティエウさんは村人に大きな影響力と発言力のある村長で、ドラの演奏空間の保存に大きく貢献しています。彼は教室を開いてドラの演奏を直接教えたり、課外活動として学校にドラの演奏を伝えたりしています。繰り返してドラの文化に関する説明を村人に納得させ、多くの人にドラに対する興味を芽生えさせた人です。そして、クティエウさんは民族衣装や地酒を造る職業、編み物を作る職業などクホ族の伝統文化の保存に力を入れています。これらは、ドラの演奏空間につながるものですが、村人の収入増加にも役立つものでもあります」

ドラの演奏空間をはじめ、クホ族の伝統文化の保存に大きく貢献したとしてクティエウさんは、2022年の愛国競争運動で立派な成績をあげたという首相の表彰状を受けた31人のうちの一人です。また、「民族の無形文化遺産と開発に大きく貢献した優秀な職人」という称号を国家主席から授与されました。今年71歳のクティエウさんは「生きている限り、クホ族の伝統文化の保存に全力を尽くす」としています。

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