2024年9月10日の朝、スーパー台風「ヤギ」に伴う土砂崩れと洪水が、北部山岳地帯のラオカイ省バオイエン県フックカイン村ランヌ集落を襲い、33世帯が完全に埋没し、57人が死亡、さらに10人が行方不明となりました。
グエン・スアン・カン氏 |
一瞬のうちに、多くの子供たちが孤児となり、頼る者もなく困難な状況に陥りました。彼らは政府や多くの善意ある個人から支援を受けており、その中にはハノイのマリー・キュリー私立学校の理事長兼校長であるグエン・スアン・カン氏も含まれています。75歳のカン氏は、ランヌ集落の15歳以下の子供たちを18歳になるまで養子として受け入れることを決定しました。
(その日の土砂崩れの音)
ランヌはベトナム北部の山々に囲まれた小さな村でした。この平和な村は美しい棚田に囲まれていましたが、自然災害によって消滅しました。現在、厚い泥の下には村人たちの生活が埋もれています。家具や長年の蓄え、そして家族の大切な人々も失われました。17歳の少年グエン・ヴァン・ハインさんは洪水が押し寄せる瞬間を思い出します。
(テープ)
「その時は朝6時で、私は寝ていました。母が『逃げて!』と叫びました。私たちは手をつないで階段を上ろうとした時、水が押し寄せてきました」
ハインさんは生き残りましたが、母親は助かりませんでした。災害から1日後に病院で目覚めたハインさんは、母親の遺体が見つかったという知らせを受けました。昨年末には父親も亡くなり、洪水によって唯一の家族を失ったハインさんは孤児となりました。
この災害で家族を失った少年についてのニュースは、多くの人々に悲しみと感動を与えました。グエン・スアン・カン氏はその中のひとりでした。彼はマリー・キュリー学校の理事長兼校長として知られているだけでなく、特に困難な状況にある少数民族学生への教育支援活動でも知られています。ハインさんについて知ったカン氏は次のように語りました。
(テープ)
「私は映像でハイン君が洪水で負傷したことを知りました。教師として、生徒が学業を続けられないと聞くと心が痛みます。私は『Thanh Niên』紙の記者に電話し、ハイン君の担任教師に連絡を取ってもらい、彼を励ますようお願いしました」
ランヌ集落の学校 |
ハインさんの担任教師であるグエン・ティ・ホン副校長と記者のおかげで、カン氏はハインさんと電話で話すことができました。その会話によって、ハインさんは未来が不透明な孤児から新しい希望を持つ「おじいちゃん」を得ることになりました。ホン副校長は次のように語りました。
(テープ)
「カン先生は非常に感動していました。私がハイン君の状況について話すとすぐに同意してくださいました。先生はまず12年生になるまでハイン君を養子として受け入れると言いました。先生はただハイン君の道しるべとなるだけでなく、ハイン君の家族になります」
ハインさんは「ランヌ集落の洪水後の子供たち支援プロジェクト」の最初の生徒となり、このプロジェクトでは15歳以下で生き残った子供たちをリストアップし、18歳になるまで支援することになっています。この支援には月額300万ベトナムドン(日本円で約1万7千円)が含まれ、その金額は保護者や後見人に直接振り込まれます。カイン氏の話です。
(テープ)
「今私が最も望んでいることは、生き残った子供たちの具体的なリストを作成し、彼らに温かい生活と良い教育を提供することです」
現在、洪水から約2ヶ月経過した時点で、生き残った村人たちは新しい村が建設されるまで仮設住宅に住んでいます。当局や建設業者は、新しい村を2024年12月31日までに完成させるために努力しています。ラオカイ省人民委員会のチン・スアン・チュオン会長は次のように期待しています。
(テープ)
「ここで互いに助け合う気持ちや全国民から寄せられる美しい行為によって、私たちは必ずより良い未来を築けるでしょう。ランヌ村は洪水によって失われましたが、新しく美しい、安全な村を再建することを決意しています」
新しい村は旧ランヌ集落からそれほど遠くない場所に形作られています。洪水から生き残った人々が早く元の日常生活を取り戻し、その痛みや喪失感が癒されることを願っています。そしてランヌ集落の子供たちが再び学校へ通い、明るい未来への夢を書き続けることができるよう願っています。