世界遺産「タンロン王城遺跡」の保存と開発

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(VOVWORLD) - ハノイ市内中心部に位置する世界遺産「タンロン王城遺跡」は2002年に発掘が開始された遺跡群です。11世紀から18世紀までベトナムの諸王朝の都が置かれた場所で、ハノイ、ならびにベトナムの歴史を物語る重要な遺跡です。

数多くの建築物の跡が残るこの遺跡はベトナムの遺跡の中で、建築、文化の面から最も重要な遺跡とされています。そのため、タンロン王城遺跡の保存と開発は優先課題となっています。

世界遺産「タンロン王城遺跡」の保存と開発 - ảnh 1タンロン王城遺跡

「タンロン」とは「昇龍」という意味で、ハノイの旧称のことです。ハノイの首都としての歴史は11世紀初頭に遡ります。1009年に前黎朝の将軍であったリ・コンウアン(李公蘊)が軍を掌握して李朝を樹立しました。翌年の1010年にそれまでの首都であった北部ニンビン省のホアルーから現在のハノイへと都をうつし、湿地帯を埋め立てて都城を築きました。

以降、1802年に樹立したグエン(阮)朝が中部フエに都をうつすまで、タンロンは歴代ベトナム王朝の首都として繁栄しました。フエへの遷都後には現在のハノイに改められ、ベトナム北部を統治する主要都市としての役目を担っていました。実に1000年もの長きにわたり、ハノイは政治権力の中心地としてあり続けたのです。

かつての王城中枢部に位置する「タンロン王城遺跡」の特徴は、各時代の遺構が層となって地中に現存するという点です。出土品からは北方の中国文化や南方の古代チャンパ王国の影響も見られ、複数の文化が融合したハノイ特有の様式が残ることから2010年に「ハノイ‐タンロン王城遺跡中心地区」という名称で世界遺産となりました。ユネスコ国連教育科学文化機関ベトナム事務所の当時のChristian Manhart所長は、タンロン王城遺跡はアジア各地の広範かつ盛んな文化交流を証明するものであると述べ、タンロン王城遺跡のように各時代の連続性を持つ世界文化遺産はめったにないと強調しました。

ベトナムの歴史学者レ・バン・ラン( Le Van Lan) 教授によりますと、遺跡の発見は本のページを順に開いていくようだとしています。発掘現場の地下2メートルのところには13世紀の陳王朝時代の遺跡がありました。その少し下、地下3メートルの場所には11世紀から12世紀の李王朝時代の物が、さらに地下4メートルの深さには、タンロン城が建てられる前、中国支配時代のダイラ(大羅)城の遺跡が眠っていました。タンロン王城の遺跡で発見された建築物の跡と遺物はタンロンが1千年にわたり、ベトナムの数多くの封建時代の都として栄えてきたことを裏付けているとしています。

世界遺産「タンロン王城遺跡」の保存と開発 - ảnh 2

この遺跡が発掘された2002年、特にユネスコによって世界遺産として認定された2010年以降、タンロン王城遺跡は国、および国内外の考古学者や研究者から大きな注目を集めています。これまでに、発掘調査されたタンロン王城遺跡の面積は1万9千平方メートルで、各王朝時代の様々な建築物の跡と、数多くの遺物が発見されました。遺跡の保存と開発は関連機関と国内外の専門家らのほか、一般の人々の間でも話題となっています。地下に眠っている遺跡から発掘されたわずかな破片でも、過去をひも解く重要な鍵になるのです。ベトナム歴史科学協会のチャン・ドゥク・クオン会長は次のように語りました。

(テープ)

「この20年、特に2010年に世界文化遺産として認められて以降の12年、タンロン王城遺跡での発掘調査作業、および遺跡の保存と開発作業は効果的に展開されてきました。ここで最も重要なのは、遺跡に対する国家機関とコミュニティの認識が益々高まっていることです。これは、タンロン王城遺跡をはじめとする国の遺跡を守り価値を発揮させていくために最も重要なことだと思います」

専門家らによりますと、タンロン遺跡の保存で難しいのが各時代の遺跡が重なっている点です。例えば、地下には李王朝の遺跡、地上には黎王朝時代に建設された宮殿、敬天殿があります。そのため、ベトナムは海外の知見を遺跡の発掘調査、および保存と開発に活用しています。遺跡の発掘調査に大きく貢献している外国人専門家の一人は奈良女子大学の上野邦一(うえの くにかず)名誉教授です。2004年から、毎回およそ10日から2週間、長いときで1カ月ベトナムに滞在し、これまでに数十回にわたりハノイを訪れている上野教授は、正しい測量や発掘方法を現地スタッフに教えつつ、過去の出土品や歴史書、今回の発掘の成果品などから研究を重ねてきました。図面を描き、建物などの復元図を作り、調査中の現場を李朝の皇帝が暮らしていた生活空間の可能性があると推測しました。

ベトナムは今後も、国内外の専門家らの深い知見を活かして、「タンロン王城遺跡」での発掘調査と研究、および効果的な保存と開発を進める方針です。タンロン王城遺跡管理センターのグエン・タイン・クアン所長は、ハノイ市は「2021年~2025年期のタンロン王城遺跡管理計画、および2045年までのビジョン」を発布したと述べ、この計画はタンロン王城遺跡を、ベトナムの各封建王朝の建築や文化などを紹介する博物館にすることを目指すものであると明らかにしました。クアン所長は次のように語りました。

(テープ)

「2030年、そして2045年までのビジョンでは、タンロン王城遺跡はハノイを訪れる観光客にとって必見の目的地になるという目標です。この遺跡の管理にあたる私たちは、子孫が鑑賞できるように遺跡の保存・改修・開発に尽力しています」

こうした取り組みにより、タンロン王城遺跡はハノイの輝かしい歴史を語り継ぐことができる期待されています。

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